国内初、未利用農地でのコケの屋外大量培養に成功

~コケ植物の原糸体を育む培養プールから生まれる新たなグリーンイノベーション~

株式会社ジャパンモスファクトリー(本社:埼玉県和光市、代表取締役CTO:井藤賀操、以下「JMF」)は、KOBASHI HOLDINGS(所在地:岡山県岡山市、代表取締役社長:小橋正次郎、以下「KOBASHI HOLDINGS」)と、岡山県真庭市の未利用農地においてコケ原糸体の屋外で太陽光での大量培養の実証実験に成功しました。

 JMFはこれまで、KOBASHI HOLDINGSと共同し、同社の施設屋上にて100L規模の水槽を用いたコケ原糸体の培養実証を実施し、他の水生生物の繁殖を抑制しながら屋外での培養に成功してきました*1。

このたび、JMFとKOBASHI HOLDINGSは、真庭市の協力を得て、未利用農地にて、あぜ塗り技術を応用した培養プールを用いた、循環型バイオ液肥を使ったコケ原糸体の大量培養の実証実験に成功しました。本実験では、屋外にて太陽光エネルギーを用いて、コケ植物の原糸体が適応できる水温を確保し、空気のバブリングがコケ植物の原糸体の生長に正の効果を与えることを数値化することに成功した国内初の成果となります。

*1:2021年3月1日「休耕田や休廃止鉱山で生育可能なコケ植物の屋外培養に成功」
https://jmf.co.jp/?p=219

[背景]

日本の農業が直面している課題のひとつに、未利用農地の有効活用があります(参考:国連のSDGs開発目標15「陸の豊かさも守ろう」)。未利用農地は、将来にわたって太陽光エネルギーが未利用エネルギーとなるため、この太陽光エネルギーを有効活用する新たな技術や新産業を創出することが期待されています。このような社会情勢に対して、JMFとKOBASHI HOLDINGSは、2021年春より真庭市の協力を得て、真庭市内の未利用農地に造成したプール施設をモデルにコケ植物の原糸体を育成する新たな技術開発を進めてきました。

コケ植物は、ヒートアイランド現象の緩和・軽減効果や環境改善素材、その他、日本庭園や室内インテリア分野などでも人の心を癒す園芸植物として、近年、注目されています。JMFは、コケ植物の原糸体を持続可能な植物素材と位置づけ、さらに、未利用となっている再生可能エネルギーを有効活用することや新たな育成技術を開発することで、コケ植物の原糸体を大量に培養し、環境改善素材として製造・加工することを通じ、地球環境問題を解決することで、私たちの健康を守ること、豊かな生活空間や暮らしに貢献することを目指しています。

 「コケ植物の原糸体」は、「胞子」と「コケ植物」の中間段階でみられるコケ植物の姿であり、「コケ植物の原糸体」を大量生産することで、「コケ植物の種(たね)」として産業利用することが期待されています。

[実証実験概要]

本実証実験は、真庭市内の農地転用地に設置したプール施設に農業用ビニールを張った状態で12日間(2022/3/28~2022/4/9)実施しました。日中は太陽光エネルギー、夜間は大気パネルヒーターと水温ヒーターを用いることで、最低水温14.6℃(4/1 7:57 ,8:07)、最高水温29.8℃(4/8 16:36)、平均水温21.18℃と、コケ植物の原糸体が適応する水温を確保しながら生長させる育成試験を実施しました。これまでの予備試験では、一般にコケ植物の原糸体が育成できる水質を確保することが新たな課題ともなるため、現地で利用する水の性質を適宜、改良する工夫も必要となることがわかっていました。このたび、プール内の水3000Lの水質をコケ植物の原糸体が適応できる水質へ改良するために、真庭市が地域で無料配布しているバイオ液肥*2 を20L混合する割合で有効活用することで、コケ植物の原糸体の生長を評価する育成試験を実施しました。これまで、JMFでは、水の中でもコケ植物の原糸体に、効率的に光エネルギーを与える手段のひとつとして、バブリング技術を利用してきました*3。今回の実証実験で、バブリングしない条件下では、コケ植物の原糸体の重量は増えも減りもしませんでしたが、バブリング条件下では、12日間で重量が4倍に増えているということを数値化することに成功しました。

*2:真庭市が提供する循環型肥料「バイオ液肥」:
https://www.city.maniwa.lg.jp/site/sigenzyunkan-potal/1777.html

*3:2021年2月10日「100L規模の培養装置での苔の培養実証に成功」
https://jmf.co.jp/?p=205

今回の実証実験では、コケ植物の原糸体の重量は、12日間で4倍に増えることがわかりましたが、環境制御された育成装置内では、2週間で300倍に増えることがわかっています。今後当社は、季節変動、日変動する屋外でのさまざまな環境条件を至適条件に制御し、コケ植物の原糸体を生長させる実証実験を進めていくことで、 2週間で300倍に増えることを目指します。また、太陽光エネルギーに限らず、風力や地熱など地域で未利用となっている再生可能エネルギーのさらなる有効活用を検討します。

真庭市の未利用農地にて、あぜ塗り技術を応用して造成されたコケ培養プール

[KOBASHI HOLDINGSについて]
社名:KOBASHI HOLDINGS株式会社
所在地:〒701-0292 岡山市南区中畦684
代表者:代表取締役社長 小橋正次郎
設立:2017年7月
事業内容:社会的・環境的課題を解決する技術の社会実装支援
URL:https://www.kobashiholdings.com/

[JMFについて]
社名:株式会社ジャパンモスファクトリー
所在地:〒351-0104 埼玉県和光市南2-3-13和光理研インキュベーションプラザ408号室
代表者:代表取締役CTO 井藤賀操
設立:2019年4月
事業内容:環境改善素材として、コケ植物の原糸体を製造・加工する環境系の理研ベンチャー
URL:https://jmf.co.jp/

[お問い合わせ先]
株式会社ジャパンモスファクトリー本店 担当者:福井、上野
Email:info@jmf.co.jp